嗅覚刺激療法 |アロマの嗅覚トレーニングセット

嗅覚刺激療法 |アロマの嗅覚トレーニングセット

2020-08-23

この記事は看護師+クリニカルアロマセラピストが記載しています。たくさんの情報が飛び交う中、嗅覚障害のアロマを使ったトレーニングについては、香りの専門家からみると驚くような内容ばかりで残念です。


正しいアロマセラピーをお伝えするのは専門職の役割です。クリニカルアロマセラピストとしての視点で書いていきます。

セラピスト
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この記事がおすすめの方

・においがわからなくて困っている方
・嗅覚刺激療法について知りたい方
・アロマを使った正しいトレーニングを知りたい方

嗅覚刺激療法 |アロマの嗅覚トレーニングセット

この嗅覚障害後の訓練という分野で一番有名な研究は、2009年にアメリカ耳鼻咽喉科学会Laryngoscopeに掲載された論文です。この研究論文を深め、2013年同学会で”嗅覚障害:心的外傷後及び感染後における嗅覚トレーニングの使用”というものがさらに発表されています。(本文は英文なので、私が訳したタイトルです。)

これらは「4種類の香りを使った嗅覚訓練」について記載されていますが、残念ながらこれらの研究は新型コロナウイルス(Covid-19)による嗅覚障害の方に対して特化して研究されたものではありません。16週間(4か月)続けた結果、なにもしない対照群と比べ、嗅覚機能の向上が得られたという結果が出ています。

セラピスト
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なにもせずにいた人と比べて
感染症が原因で匂いがわからなかった人→67.8%
心の不調により匂いがわからなかった人→33.2%

嗅覚機能の向上が得られたという結果でした!

嗅覚刺激療法

嗅覚刺激療法は1日2回、4種類の香りを深呼吸しながら嗅ぐ。たったそれだけの簡単な方法なのですが、問題なのはなにを嗅げばよいのかという所です。

100均はアロマじゃない!

アロマセラピーは自然な植物を用います。アロマセラピストが使う精油(別名:エッセンシャルオイル)は、植物から抽出したものでその他に不純物は含まれていません。

写真は精油の裏側です。植物の名前であるラベンダー、植物学で扱う名前(学名)が英語で記載されています。

アロマオイルとして販売されているものは、原材料は石油。100均で裏側を見ていると、「界面活性剤、エタノール、合成香料、水」と記載されています。アロマオイルとして販売されているものは合成香料がほとんど。間違えないでくださいね。

セラピスト
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〇 精油
〇 エッセンシャルオイル
× アロマオイル

精油 | エッセンシャルオイルを使う理由

精油(エッセンシャルオイル)以外にも、ハーブやスパイスをそのまま訓練に用いても良いとは思うのですが、「そのままの素材を嗅いで香りがわかる」という方はこのブログに辿り着いていないと思うのです。きっと本当に困って、探して頂いたから今読んでくださっていると思います。

アロマセラピーで使う精油の特徴は、植物の成分が「蒸留」という過程で濃縮されている所です。

身近なハーブであるミントで例えてみます。ミントの精油1滴(ポタっと精油のガラス瓶から出す1滴のしずく。米粒くらいの大きさ)はミントのハーブティー1000杯の濃度と同じと言われています。

それだけ濃縮されているからこそ、正しく安全に使用するためにアロマセラピストという専門職がいます。

アロマの嗅覚トレーニングセット

4つの香りをフタを開けるだけで使えるアロマインヘーラーにしました。手元に届いたらフタを開けるだけで使えます。

セラピスト
セラピスト

アロマインヘーラーは楽に使えてコスパが良い一番簡単なアロマです!
詳しく知りたい方はブログ:アロマインヘーラーもご覧ください!

論文で使われている4種類の香り成分と含まれる精油は

  • phenyl ethyl alcohol: rose
  • eucalyptol: eucalyptus
  • citronellal: lemon
  • eugenol: cloves

上記を読むとローズ、ユーカリ、レモン、クローブを嗅げば良いのねと思いがち。こちらの成分をクリニカルアロマセラピスト的に解釈してみます。

4つの香りを読み解く!

①phenyl ethyl alcohol: rose(ローズ)

フェニルエチルアルコール:ローズとありますが、アロマセラピーで主に用いられる水蒸気で採るローズ精油はこちらの成分がとっても少なくなってしまいます。

同じローズを使っても、アブソリュートという溶剤を使って採るとこの成分が多く抽出できます。

2-フェニルエタノール/2-Phenylethanol
別 名:フェニルエタノール、フェネチルアルコール、
β-フェニルエチルアルコール、ベンジルカルビノール
系統名:2-フェニルエタノール
化学的分類:ベンゼノイドアルコール
CAS番号:60-12-8
含有精油>1.0%:
ローズアブソリュート(プロヴァンス) 64.8-73.0%
バクールアブソリュート38.8%
オレンジフラワーアブソリュート 4.5-35.0%
チャンパカアブソリュート(オレンジ) 25.0-34.0%
ヒヤシンスアブソリュート3.7%
ジャスミンサンバックアブソリュート 2.4%
オスマンサスアブソリュートtr-2.2%
ローズ(ダマスク)0.3-2.0%
ナルキッサスアブソリュート0-1.6%

ロバートティスランド,ロドニーヤング:精油の安全性ガイド,フレグランスジャーナル社

こちらを見て頂けると一目瞭然で、1番目がローズアブソリュート。水蒸気の方で採ったローズは8番目です。含有量も全く違います。

アロマセラピーで溶剤(化学薬品を用いて抽出)を使うのはどうなのかという論争もありますが、ここぞとばかりに化学の力を借りて、嗅覚刺激療法ではローズアブソリュートを使用しています。

②eucalyptol: eucalyptus(ユーカリプトール:ユーカリ

2つ目の香りはユーカリに含まれるユーカリプトールという成分についてです。このユーカリプトールは1.8シネオールとも呼ばれます。こちらの呼び方の方がアロマセラピーでは一般的です。ユーカリは種類が非常に豊富な植物です。代表的なユーカリを見てみます。

私が一番使うユーカリラディアータ

・Eucalyptus radiata 1,8-シネオール60.4-64.5%

ロバートティスランド,ロドニーヤング:精油の安全性ガイド,フレグランスジャーナル社

日本では一番よくみかけるユーカリグロブルス

・Eucalyptus globulus 1,8-シネオール65.4-83.9%

ロバートティスランド,ロドニーヤング:精油の安全性ガイド,フレグランスジャーナル社

両方とも大体6割ぐらいがこの1.8シネオールです。ただ、体を冷やす作用が下段のユーカリグロブルスにはあり、寒気があると嗅ぎたくなかったり、香りを強く感じすぎてしまう方が多いため、上段のユーカリラディアータを使います。この2つめの香りが、嗅覚障害のご相談を頂いた際に、「どうにかわかる!」という方が多いです。

③citronellal: lemon(シトロネラ―ル:レモン

最初に論文を読んだ時、疑問に思った所でした。レモン??レモンにこのシトロネラ―ルはほぼ入っていません。レモンユーカリ(lemon scented gum)に含まれます。

レモンの精油は香りが弱め。そして腐敗が早く管理がしにくい精油です。

成分の多さを優先してレモンユーカリで対応しています。

レモンセンテッドガム/Lemon-scented gum
別 名:ユーカリプタスシトリオドラ、レモンセンテッドアイロンガム、スポテッドガム、レモンユーカリプタス
学 名:Corymbia citriodora Hook.
学名の異名:Eucalyptus citriodora Hook.、Eucalyptus
maculata Hook.var.citriodora Hook.、Eucalyptus
melissiodora Lindley
科 名:フトモモ科
精油
抽出部位:葉及び末端の小枝
主要成分:「オーストラリアン」
シトロネラール81.7%
シトロネロール4.9%
イソプレゴール1.3%

ロバートティスランド,ロドニーヤング:精油の安全性ガイド,フレグランスジャーナル社

④eugenol: cloves(オイゲノール:クローブ)

4つ目の香りはオイゲノールという成分を採る必要があり、クローブの香りを論文では使っています。クローブの中でも多く含有されているのはクローブバッドという種類です。なかなかセラピストでも使いこなすのが難しい精油です。気分を落ち着ける鎮静力がとても強いです。②ユーカリに続いてこのクローブの香りを感じとることが出来る方が多く、チャイに使われるスパイスの香りがします。

クローブバッド/Clove bud
抽出部位:乾燥した花蕾
主要成分:オイゲノール73.5-96.9%

ロバートティスランド,ロドニーヤング:精油の安全性ガイド,フレグランスジャーナル社

まとめ

  • 紹介した論文はコロナで試されたものではありませんが、嗅覚を徐々に取り戻していく経過がわかる為、当店クライアントにはとても安心材料になっています。
  • ①ローズは高価、④クローブはセラピストでも難しい精油。4種類の精油を揃えるのは大変!必要な分だけほしい!→覚トレーニング4つの香りセットが便利!